「茅(かや)」とは?

茅(かや)は、茅葺屋根を葺く材料として使用される稲科の多年草の総称で、主にススキが多く使用されています。世界遺産にも登録されている岐阜県・白川郷の「合掌造り」の茅葺屋根がイメージしやすいかもしれません。そして「茅の採取」や「茅葺」自体も、日本が誇る伝統技術としてユネスコ無形文化遺産に登録されています。
実は白川郷をはじめ、川崎市立日本民家園、鎌倉、京都美山など、国内の様々な場所で御殿場の茅が使われております。

御殿場は地の恵みとして、富士山の麓に「かや」が一面に広がっています。冬のその風景は、美しく尊い気持ちにさえさせてくれます。こんなに多くの「かや」があるのに、全て刈ることができていません。もっと「刈り手」がいれば、もっと多くの「かや」を刈り、全国の古民家の維持に役立てるのに...かや刈りの季節が終わるとき、来年のために「かやの野焼き」をします。もっとかやを刈りたかった!・・・そんな気持ちで焼かれていく「かや」を見ています。私たちは、今後も、かや材文化を守り、茅葺民家を守っていきたいと強く願っています。そのためにも、「かやの刈り手」育成に力を入れ、かや材文化を継承していきたいと考えています。

白川郷の合掌造り 茅葺屋根の葺き替え作業

なぜ「御殿場」が茅の産地になり、文化が受け継がれる場になったのか? 

皆さんは「御殿場(ごてんば)」をご存じでしょうか?富士山のふもとにある町で、有名なアウトレットに訪れたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

富士山の麓に広がる4,000ヘクタール以上のススキ草原が御殿場の”茅場(かやば)”で、国内にある茅場としては本州最大の面積を誇ります。視界にどこまでもススキがひろがりその先に富士山がそびえ立つ、他にはない風景がある私たちの仕事場です。

茅場からのぞむ富士山

茅場は状態を維持するために「野焼き」という作業が必要で、御殿場では毎年2月に行います。一度茅場を焼くことで低木や雑草などの侵入拡大を防ぎ、燃える過程で発生した灰が肥料となり、そこからまた良質な茅が育ちます。御殿場は富士山・箱根・愛鷹山と三方を山に囲まれた盆地で、駿河湾から吹き上がる湿った空気が3つの山を吹きまわるうちに雨や霧を生み出し多湿的な気候を作ります。標高が高い高原都市であるために涼しさも兼ね備えた御殿場は、冷涼多湿な環境を好む茅にとって最善な土地なのです。御殿場で生まれた茅が、全国各地の貴重な文化財で使われている理由の一つでもあります。

茅文化を残す事が“二酸化炭素削減”につながる

実は日本以外でも、オランダやデンマークなどヨーロッパ諸国では環境問題・そして人にやさしい住居になるという理由から積極的に茅を使った住居がいまでも建築されており、SDGsの目線で世界では注目されている素材なのです。
茅はスギなどの植林よりもCo2の吸収量が多いと言われており、茅を屋根に葺く事で、屋根の寿命である約30年間は屋根に炭素が固定され、温室効果ガス削減につながります。古くなった茅は肥料として使われ、やがて土に還ります。無駄なく循環して使うことができるだけでなく、環境に良い効果をもたらす茅は「自然が生んだ究極のエコ素材」なのです。
また、茅場は水源を涵養し、山野草や昆虫、野鳥などの宝庫です。茅場を維持し、茅の循環的利用を続けることで、二酸化炭素の削減、生物多様性の維持にも大きく貢献することができます。

茅場

このままでは廃れてしまう。江戸時代から御殿場に続く「茅文化」 

しかし現在、茅文化は衰退の危機に瀕しています。

国内にある茅葺き建造物はピークからはかなり減っているものの、それでもすべてを維持し続けるにはいまの10~20倍以上の職人の数が必要ともいわれています。御殿場の茅刈り職人も半数以上が60代を超えていて、新たな世代の刈り手を育成することが急務だと感じています。

建築基準法によって茅葺屋根の建設には規制があり、新しい建物に使用することは簡単ではありません。アートやインテリアグッズに活用される事例も増えてきていますが、まだまだその活用範囲は狭いのが事実です。茅場となる草原も農業の近代化や植林に伴い面積が減っており、茅場の維持も取り組まなければならないことのひとつです。

以前御殿場市の人に茅を知っているかというアンケートをしたところ、回答した市内居住者の84%が茅を”知らない”、という結果がありました。「知られていない」ことが一番の課題であると危機感を持った私たちは、茅に触れてもらうワークショップを開催するなどして、少しでも認知度を高める活動を行っています。

しかし、先に述べたように茅の文化を伝えられる職人の数は減ってきており、本業で全国を飛び回りながら実施できる回数や人数には限界があり、多くの人に伝えきれていないのが現状です。

より多くの人に知っていただく活動

まずはより多くの人に茅を知ってもらうこと、そしてそれが茅の用途拡大につながり、”将来の茅職人“育成に向けての第一歩になっていくと考えています。

私たちの“仕事”をより深く知ってもらえるような「実際に茅場に入る体験の提供」や、遠方の方でも御殿場の茅に興味をもっていただけるような「茅製品の開発」「茅事業に携われる企画」を準備しています。

茅はどんなところで育ち、どんな役割を果たし、なぜ今も必要とされるのか。
職人として、そして茅とともに生きる者として、言葉に宿る“体験”を通してお伝えしています。

通常許可された事業者しか入ることができない御殿場市内の富士山麓の茅場で、特別に茅刈りができる体験です。

手のひらで茅の質感を確かめ、香りを感じ、形にする体験。素朴であたたかい “茅のある暮らし” を楽しんでいただきます。
自然素材と向き合う時間は、どこか懐かしく、心をほどくひとときです。

茅でほうきを作ります。
茅の形をそのまま活かしたデザインで、オブジェのようにも見えます。玄関先やベランダなどちょっとしたスペースのお掃除に便利!

茅でミニほうきを作ります。
柄からほうきの先まで20cmほどのハンディサイズで、机の上や階段など細かいところのお掃除に向いています。

かやでコースターを作成します。

研修があるため、初心者でも簡単に作業できます。

「秩父宮記念公園(御殿場市)」にて、茅を使った建物の虫よけを行うための「いぶし」の作業を見学いただきます。

50cmほどの高さのテント型のランプシェードです。簡易LEDライトも付属しますのですぐにお楽しみいただけます。茅ならではの雰囲気と光で癒される商品です。※茅は可燃性のため、お手持ちのライトに変更する場合はLEDライトの使用をおすすめします。

毎年行われる白川郷集落での茅葺き作業をご支援いただくセットです。ご支援のお礼に、白川郷での茅葺の際に屋根に支援者様のお名前入りのタグをのせた状態で撮影します。屋根に使うためにひとまとめにした茅=「茅束」のミニチュアサイズを、白川郷に使った茅と同じ茅で製作します。「ミニ茅束」に撮影に使ったお名前タグをつけて、写真と一緒にお届けします。

※企画の有無は年度により異なります。

富士山GoGoエフエムにて毎週土曜日12:00~12:30に放送される「茅取物語」にて、本リターンの支援者のお名前や応援メッセージをご紹介します。
御殿場・小山町の一部をエリアとするコミュニティFMですが、パソコンやスマホからサイマルラジオなどでお聴きいただくことができます。(周波数86.3FM)

最後に改めて、私たちが「茅」にかける思い

私たちが普段作業している広大な御殿場の茅場です。 こんなにもたくさんの茅があるのに、その5%ほどしか活用ができていません。毎年茅刈りが終わると、次の年の茅を育てるために野焼きを行いますが、「もっと茅を刈りたかった!活用したかった!」とそんな気持ちで焼かれていく茅を見ています。もっと茅を知ってくれる人がいればもっと刈り手がいればもっと茅の使い道が広がれば、いろいろな方法で活躍させることができると考えています。

自分の刈った茅が白川郷のような世界遺産や各地の古民家を支える材料になるというこの仕事にとてもやりがいと誇りを感じています。ぜひ私たちの活動を通して、茅を知ってくれる人、茅に触れる人、茅に関わる仕事に興味を持ってくれる人が増やせたらうれしいです。

日本が誇る「茅文化」、そして御殿場の茅を守るための活動にあたたかいご支援をどうぞよろしくお願いいたします。